今後は週に1回のペースで更新していく予定です。読者の皆さんの健康に関するお悩みや疑問を、薬剤師の視点からわかりやすく解決していきます。

【Q&A】いつものあの人がちょっと違う――薬局で気づく認知症の扉


──薬剤師として20年、高齢の患者さんと向き合ってきたジョニーが、ふとした違和感から「認知症の扉」をそっと開いた瞬間をQ&A形式でまとめました。ご家族やご本人にも、早めに気づいてほしいサインです。


  1. Q1. 「薬が変わったと聞いたけど…」いつもは説明できたのに急にぼんやり返事するのはなぜ?
    1. 80代男性Aさん;これまで「今日は血圧の薬変わってるやろ?病院で測ってもらったら上がってたんや」と自分の言葉で詳しく説明してくれていました。しかし、ある日からは「そうやったかいな…」とうつむいたまま。
  2. Q2. 以前は化粧されていたのに、急にすっぴんで来局…どうして?
    1. 70代女性Bさん;今までは綺麗に化粧をして来局されていましたが、最近はすっぴん。その理由を聞こうにも聞けず、時が経てばもう手遅れ。
  3. Q3. いつも穏やかなのに、「なんで薬がないんや!」と怒鳴るようになった理由は?
    1. 80代男性Cさん;これまで薬が足りないとお詫びすると、「気にしなくていいですよ」と穏やかに返してくださいました。ところが先日は突然、「なんで薬足りひんねん!」と激昂。
  4. Q4. 最近、表情が乏しくなり反応が薄い…何が起きている?
    1. 80代女性Dさん;以前はおしゃべりが大好きで会話も弾んでいたのに、最近は言葉が少なくなり、小さくうなずくだけで声もか細くなってしまいました。
  5. Q5. 「この前こう言われましたよね?」に「そんなん言うたかな…そやそや」と取り繕うのはなぜ?
    1. 80歳男性Eさん;「この前お薬の副作用かもしれないということで、お薬が中止になっていたかと思いますが、その後の体調はいかがですか?」と尋ねると、Aさんは「副作用?あ〜そやそや、大丈夫大丈夫や」と答えるものの、実際はどんな副作用が起きていたのか覚えてない様子。
  6. Q6. 病院ではしっかりしているが、家では注意散漫、ちょっとしたことで興奮・怒りっぽくなるのも認知症の兆候?
    1. ご家族から「リビングで転びやすくなった」「些細なことですぐイライラする」と相談が寄せられます。
  7. Q7. 「これは普通の物忘れ?」それとも病気としての認知症?
  8. Q8. 気づいたらどう動く?薬剤師ジョニーの行動と提案
  9. 最後に

Q1. 「薬が変わったと聞いたけど…」いつもは説明できたのに急にぼんやり返事するのはなぜ?

80代男性Aさん;これまで「今日は血圧の薬変わってるやろ?病院で測ってもらったら上がってたんや」と自分の言葉で詳しく説明してくれていました。しかし、ある日からは「そうやったかいな…」とうつむいたまま。

【A】 会話の内容自体は把握できているものの、直前に聞いた情報や自分の知っていることを呼び起こせず、「何だったかな…?」と記憶が“飛ぶ”状態です。


Q2. 以前は化粧されていたのに、急にすっぴんで来局…どうして?

70代女性Bさん;今までは綺麗に化粧をして来局されていましたが、最近はすっぴん。その理由を聞こうにも聞けず、時が経てばもう手遅れ。

【A】 習慣的な手順(化粧の順番や要領)が思い出せず、省略してしまうことがあります。


Q3. いつも穏やかなのに、「なんで薬がないんや!」と怒鳴るようになった理由は?

80代男性Cさん;これまで薬が足りないとお詫びすると、「気にしなくていいですよ」と穏やかに返してくださいました。ところが先日は突然、「なんで薬足りひんねん!」と激昂。

【A】 「なぜ自分だけが…。」という思いが、怒りとなって表面化します。また、説明を聞いても「どうしてそうなったのか」が頭に入らず、不満やいらだちが爆発しやすくなります。


Q4. 最近、表情が乏しくなり反応が薄い…何が起きている?

80代女性Dさん;以前はおしゃべりが大好きで会話も弾んでいたのに、最近は言葉が少なくなり、小さくうなずくだけで声もか細くなってしまいました。

【A】 心の混乱や戸惑いが表情に出なくなり、無表情・反応の鈍化として現れます。


Q5. 「この前こう言われましたよね?」に「そんなん言うたかな…そやそや」と取り繕うのはなぜ?

80歳男性Eさん;「この前お薬の副作用かもしれないということで、お薬が中止になっていたかと思いますが、その後の体調はいかがですか?」と尋ねると、Aさんは「副作用?あ〜そやそや、大丈夫大丈夫や」と答えるものの、実際はどんな副作用が起きていたのか覚えてない様子。

【A】 覚えてない・分からない不安を隠すために“合わせる”行動。初期の認知機能低下でよく見られます。


Q6. 病院ではしっかりしているが、家では注意散漫、ちょっとしたことで興奮・怒りっぽくなるのも認知症の兆候?

ご家族から「リビングで転びやすくなった」「些細なことですぐイライラする」と相談が寄せられます。

【A】 先生の前ではしっかりされている患者さんは意外に少なくないです。しかし、住み慣れた家では注意散漫や興奮、怒りやすさが現れやすくなります。


Q7. 「これは普通の物忘れ?」それとも病気としての認知症?

  • 加齢性の物忘れ:ヒントで思い出せる、習慣的行動は継続できる、表情豊か
  • 認知症の初期症状:ヒントがあっても言葉が出ない、化粧や服装の習慣が途切れる、無表情・怒りやすさ・注意散漫を伴う

これらが組み合わさる場合は「病気としての認知機能障害」を疑い、専門機関への相談を。


Q8. 気づいたらどう動く?薬剤師ジョニーの行動と提案

  • ご家族へ連絡 ;「最近おうちでの様子はどうですか?」と具体的に聞き、日常の変化を把握。
  • 地域包括支援センターへ相談; 困りごとをまとめて専門窓口につなぎます。
  • 医師への報告&治療提案
  • 認知機能改善薬(コリンエステラーゼ阻害薬)は初期の方が効果的
  • BPSD(認知症の行動・心理症状)には抗精神病薬・抗不安薬、漢方の抑肝散などの選択肢も

早めの対応で、ご本人の自立した生活を維持しやすくなるだけでなく、ご家族の負担も大きく軽減されます。
早めの相談・治療は、本人と家族、両方の“安心”につながる大切な一歩です。


最後に

「いつものあの人がちょっと違う」と感じたら、小さなサインを見逃さずご相談を。薬剤師ジョニーが、あなたと大切な人の安心を支えます。

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