はじめに
近年、糖尿病治療薬として使われているGLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)が、減量目的で注目を集めています。インフルエンサーやSNSの影響で「やせ薬」として広まっている背景がありますが、医師の管理下を離れて使用することは非常に危険です。
本記事では、GLP-1製剤の作用や副作用、乱用のリスク、そして正しい使い方について、信頼できる情報源をもとにお伝えします。
GLP-1製剤とは?
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、腸から分泌されるホルモンで、以下のような作用があります。
- 食後の血糖上昇を抑える
- インスリン分泌を促進
- 胃の動きを遅らせる(満腹感の持続)
- 食欲を抑制する
この作用を利用したのがGLP-1受容体作動薬で、主に2型糖尿病治療に使用されています。
薬剤名 | 主な製品名 | 投与経路 | 用途 |
---|---|---|---|
チルゼパチド | マンジャロ | 注射 | 糖尿病治療 |
セマグルチド | リベルサス | 注射・経口 | 糖尿病治療 |
※マンジャロについて詳しく知りたい方はこちらへ。
※リベルサスについて詳しく知りたい方はこちらへ。
なぜ「やせ薬」として使われているのか?
GLP-1製剤には、胃から腸へ食べ物が送られるスピードをゆっくりにする働きがあります。これによって、食後もしばらく満腹感が続きやすくなるため、食べ過ぎを防ぐ効果が期待されます。
こうした作用から、本来は糖尿病の治療薬であるにもかかわらず、医師の処方を受けずに“やせ薬”として使おうとする人が増えているのです。
しかし、この使用法は本来の目的から外れており、健康リスクを伴う行為です。
副作用と健康被害
GLP-1製剤の服用により、以下のような副作用が報告されています。
よくある副作用
- 吐き気、嘔吐、下痢
- 頭痛
- 食欲不振
- めまい、ふらつき
重篤な副作用
- 膵炎
- 腎機能障害
- 脱水
- 重度の低血糖(特に他の糖尿病薬と併用時)
出典:厚生労働省『医薬品・医療機器等安全性情報 No.404』
出典:PMDA『医薬品安全対策情報』
自己チェックリスト:こんな症状が出ていませんか?
GLP-1製剤を服用している、あるいは服用を検討している方は以下を確認してください。
- □ 食事がとれないほどの吐き気がある
- □ めまいやふらつきが続いている
- □ 極度のだるさや無気力感がある
- □ お腹の強い痛みや違和感がある
- □ 意識がぼんやりすることがある
ひとつでも当てはまる場合は、すぐに服用を中止し、医師に相談しましょう。
専門機関からの警告
日本糖尿病学会の声明
「GLP-1受容体作動薬は、糖尿病治療を目的に医師の管理のもとで使用されるべきであり、美容や減量目的での自己判断による使用は強く推奨されない。」
PMDA(医薬品医療機器総合機構)からの通知
「インターネットで購入される未承認品、個人輸入薬によるGLP-1製剤の健康被害報告が相次いでいる。」
これらの機関は繰り返し、処方薬の乱用と個人輸入のリスクについて警鐘を鳴らしています。
正しいダイエットのために
ダイエットを望む方には、医学的に安全な方法で体重管理を行うことを推奨します。
- 医師や薬剤師に相談する
- 栄養バランスの取れた食事
- 無理のない運動の継続
- 健康診断などによる経過観察
※ダイエットについては参考記事も作成してますので是非ご覧になってください。
まとめ
GLP-1製剤は、糖尿病治療のための薬です。「やせ薬」として自己判断で使用することは、健康を損なう危険な行為です。医薬品は、医師の診断と指導のもとで適切に使用しましょう。
【参考資料・引用元】
- 厚生労働省:「医薬品・医療機器等安全性情報」No.404 https://www.mhlw.go.jp/topics/2023/05/tp202305.html
- PMDA(医薬品医療機器総合機構) https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/adr-info/0001.html
- ノボ ノルディスク:「リベルサス製品情報」 https://www.novonordisk.co.jp/healthcare-professionals/products/ozempic-ribelus.html