はじめに
今回は、80代後半の女性が 2種類の睡眠薬 レンドルミン(ブロチゾラム)錠とサイレース(フルニトラゼパム)錠 を長年使っていた中で起きたある出来事をきっかけに薬の見直しを始めたというお話をご紹介します。
娘の家に泊まった朝に異変が

Aさん、こんにちは。いつも飲まれている眠り薬ですが、毎日飲まれていますか?

ああ、こんにちは。実はね、ちょっと聞いてほしいことがあるんです。

はい、どうされましたか?

この間、娘の家に泊まりに行ったんですよ。いつもなら早く寝るけど、その日は話し込んでて遅くなってしまって。それで寝る前にいつものように2つの睡眠薬を飲んだんですけど、翌朝なんだか体が思うように動かなくて、服もうまく着れなかったんです。

そうだったんですね。それはちょっと心配ですね…。

娘にも「お母さん、朝なんか変やったよ」って言われて…。正直、その朝のことあんまり覚えてないんです。だから薬飲むのが怖くなって、、、。普段も朝フラつくことがあるので、ちょっと薬を減らした方がいいのかなと思い始めてて…。

それはもしかしたら薬の効果がまだ残っていたのかもしれませんね。Aさん今お飲みなのは、「レンドルミン(ブロチゾラム)0.25mg錠」と「サイレース(フルニトラゼパム)2mg錠」の2種類ですね。

そうです、もう何年もずっとそれです。

一般的に、レンドルミン0.25mg(ブロチゾラム)とサイレース2mg(フルニトラゼパム)は約6〜8時間ぐらい効きます。ですがサイレース2mg(フルニトラゼパム)の方が効果が強いお薬です。どちらかをまず中止するとしたら、効果の弱いレンドルミン0.25mg(ブロチゾラム)から試すのがいいと思います。まずはサイレース2mg(フルニトラゼパム)だけにしてみて様子を見ませんか?もし眠れないようならそのときまた一緒に考えましょう。

そうですね。それなら試してみようかな。
何かあったらまた相談してもいいですか?

もちろんです。体の調子や眠りの質に変化があったらいつでも教えてくださいね。
2週間後にお電話で体調確認しました

Aさんこんにちは。2週間前にレンドルミン0.25mg(レンドルミン)をやめてみましょうかというお話をしましたが、その後どうですか?眠れていますか?

やっぱり、前よりはちょっと浅いというか…ぐっすり感は少し減ったような気がしますね。でも、なんとか眠れています。

ぐっすり感は減っているんですね。では、朝起きたときのふらつきなどはどうでしょうか?以前と比べて変化はありましたか?

それがね、ふらつきはだいぶマシになりました。

それは良かったです。後は「ぐっすり感」ですね。今回中止してもらったレンドルミン0.25mg(ブロチゾラム)というお薬は、もうひとつのサイレース2mg(フルニトラゼパム)よりも効き目がゆるやかで、体からも早く抜けるタイプのお薬なんです。最初は「ぐっすり感」が得られないかもしれませんが、少しずつ慣れていくと思います。これからも無理のないペースでお薬の調整を一緒に考えていきましょうね。
患者さんご自身とそのご家族の方へ
「長年飲んでいるから大丈夫」「飲まないと眠れない気がする」
そんなお気持ちとてもよく分かります。
睡眠薬は一度飲み慣れるとそれ自体が「寝るための習慣」になっている方も多いです。
飲まないと不安になる、寝つけない気がする……。それは自然な反応です。
でも実は、年齢を重ねるにつれて薬の効き方は変わっていきます。
睡眠薬はたしかに「眠気をうながす薬」ですが同時に、
筋肉の力をゆるめたり、注意力を低下させたりする作用もあります。
高齢になるとこの作用が強く出すぎてしまい、
- 朝起きたときにふらつく
- トイレに立とうとして転倒する
- 外出中に階段でバランスを崩す
といった重大なケガや骨折につながることもあるのです。
今回の患者さんのように、
「服をうまく着られない」「朝のことを覚えていない」
といった変化も薬の作用が強く残ってしまっているサインのひとつかもしれません。
だからといって「薬をすぐやめましょう」ということではありません。
まずは、1種類だけ減らしてみませんか?
不安なら薬剤師や医師に気軽に相談してくださいね。